ADHD・ASD・LD(ディスレクシア)・DCD(発達性協調運動症)について、2026年に国際誌で発表された研究を紹介します。学生、教員、保護者の方に、新しい研究で何が分かってきたのかを知っていただくためのページです。各論文には日本語訳タイトル、主な結果、教育・支援への示唆を載せています。背景・対象・方法・限界は「研究の詳細を見る」から確認できます。
DCD(発達性協調運動症)
知的発達や神経疾患では説明できない、協調運動の困難です。書字、体育、身辺自立などに影響し、5〜6%の子どもにみられるとされています。
ASD(自閉スペクトラム症)
社会的コミュニケーションの困難と、限定された興味・反復行動を特徴とします。運動の不器用さを伴うことが多いことも知られています。
ADHD(注意欠如・多動症)
不注意、多動性、衝動性を特徴とします。実行機能や睡眠の問題を併せもつことも少なくありません。
LD(学習障害)・ディスレクシア
知的発達に遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算に特異的な困難を示します。ディスレクシアは、その代表である読み書きの困難です。
DCDレビュー(エビデンスの整理)OA
発達性協調運動症の子どもへの介入:スコーピングレビュー
原題:Interventions for children with developmental coordination disorder: A scoping review
Jelsma D, Svoboda Z, Abdollahipour R, ほか(計10名)|Developmental Medicine & Child Neurology,68(9), 1184–1194|2026-02-26(オンライン)
DOI: 10.1111/dmcn.70221|オープンアクセス(CC BY 4.0)
主な結果:課題指向型アプローチ、運動スキル練習、スポーツ練習が中心で、アクティブビデオゲームや感覚・知覚運動訓練も多く報告されていました。これに対し、対象児の定義が不十分な研究が多く、長期的な心理社会面や生活への参加のアウトカムはほとんど検討されていませんでした。介入の種類は広がっている一方、その効果を生活の場で確かめる研究は不足しています。
教育・支援への示唆:著者らは、学んだ運動スキルを日常生活で使えるか、環境・心理社会面への影響、保護者の理解と支援、という三つの領域を評価に含めるよう提言しています。学校の支援計画でも、運動スキルの向上に加えて、授業や休み時間への参加、自己肯定感の変化を評価の対象にします。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- DCDの診断例・疑い例の子どもに対して、世界でどのような介入が行われ、何が評価されてきたのか。本研究はこれをICF(国際生活機能分類)の枠組みで整理し直しました。
- 研究デザイン
- スコーピングレビュー
- 対象
- 202研究(206介入)、子ども・青年 計4,593名
- 方法
- 8つの文献データベースを言語制限なしで検索(30,637件をスクリーニング)。介入の種類・実施場面・実施者・評価アウトカム・結果を内容分析しました。
- 限界・留意点
- 本研究は介入の種類と評価の内容を整理したものです。介入の効果量は統合していないため、どの介入が最も効果的かは分かりません。
DCDRCT(予備的)購読誌
運動と認知を統合したトレーニングはDCD児の実行機能と粗大運動スキルを改善する:パイロットRCT
原題:Motor-cognitive integrated training improves executive function and gross motor skills in children with developmental coordination disorder: a pilot RCT
Chen JW, Ma GL, Du WQ, ほか(計7名)|Pediatric Research,巻号未定(早期公開)|2026-10-13(オンライン)
DOI: 10.1038/s41390-026-05549-5|PMID: 42869961|購読誌(非オープンアクセス)
主な結果:両群とも運動スキルが向上し、実験群の伸びがより大きくなりました。実行機能では、実験群で主に反応時間と逆効率スコアが改善しました。一方、正答率の改善は一部の条件に限られました。
教育・支援への示唆:体育や自立活動では、手本の動きをよく観察させ、頭の中で動きをイメージさせてから練習に移る、という流れを取り入れることができます。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- DCD児は、運動協調の困難に加えて実行機能の困難も示しやすいことが知られています。それにもかかわらず、運動と認知を統合した介入を学校で検証した研究は多くありません。そこで本研究は、基本運動スキル(FMS)の練習に動作観察・運動イメージ(AOMI)を組み合わせ、その効果を調べました。
- 研究デザイン
- パイロット・ランダム化比較試験(学校ベース)
- 対象
- DCD児20名(実験群10名/能動的対照群10名)
- 方法
- 実験群:FMS練習+AOMI、対照群:FMS練習+映像による身体活動教育。いずれも週3回・10週間。粗大運動はTGMD-3、実行機能はMore-Odd Shifting課題・Stroop課題・空間ワーキングメモリ課題で評価しました(ClinicalTrials.gov NCT07486856)。
- 限界・留意点
- 少人数のパイロット研究であり、著者自身も結果は「確定的ではなく予備的」と述べています。
DCDRCTOA
八段錦はDCD児の運動機能と大脳皮質の活動を改善する:ランダム化比較試験
原題:Baduanjin improves motor function and cortical activation in children with developmental coordination disorder: a randomized controlled trial
Gao J, Ke X, Jiang C, ほか(計10名)|BMC Complementary Medicine and Therapies,巻号未定(オンライン公開)|2026-08-13
DOI: 10.1186/s12906-026-05509-w|オープンアクセス(CC BY 4.0)
主な結果:実験群はMABC-2総合得点が有意に高く(ITT解析)、「狙う・捕る」とバランスが改善しました。静的バランス(重心動揺面積・軌跡長)と動的姿勢安定性も改善しました。これに対し、手先の器用さには群間差がありませんでした。fNIRSでは、捕球課題中の左運動前野・補足運動野の活動が実験群で高く、運動成績の改善と運動関連領域の活動に正の相関がみられました。運動成績の改善は、運動関連領域の活動の高まりと並行して生じていたことになります。
教育・支援への示唆:ゆっくりとした全身運動を家庭と連携して続けることは、バランスや粗大運動を支える方法の一つになります。一方、手先の器用さは改善しなかったため、書字や道具操作には別の支援を組み合わせます。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- 中国の伝統的な心身運動である八段錦は、DCD児の運動機能を改善するか。また、その効果は運動関連皮質の活動の変化を伴うか。本研究はこの二点を検討しました。
- 研究デザイン
- 単盲検ランダム化比較試験
- 対象
- DSM-5のDCD基準を満たし、MABC-2標準得点7以下の5〜10歳児40名(実験群・対照群に無作為割付)
- 方法
- 実験群:八段錦+健康教育、対照群:健康教育のみ。8週間・週5回(病院で指導者付き2回、家庭で保護者の見守り3回)。MABC-2、ProKin 254バランス測定、fNIRSによる課題中の皮質血行動態を評価しました(ChiCTR2300078980)。
- 限界・留意点
- 対象者は40名(プロトコル完遂36名)と小規模です。また、対照群は運動を行わない健康教育のみでした。脳活動の変化が改善の原因であるかどうかは、今後検討する必要があります。
DCDRCTOA
錯視がDCD男児の運動スキル学習に及ぼす効果:学校ベースのランダム化比較試験
原題:Effect of Visual Illusion on Motor Skills Learning in Boys With Developmental Coordination Disorder: A School-Based Randomized Controlled Trial
Zamani MH, Hashemi A, Razeghi R, ほか(計5名)|Research Quarterly for Exercise and Sport,pp.1–13(早期公開)|2026-06-17(オンライン)
DOI: 10.1080/02701367.2026.2684257|グリーンOA(著者稿などが公開)
主な結果:錯視により、的の大きさの知覚は変化しました。練習期と保持期のいずれでも群間に有意な差があり、的が小さく見える条件で最も学習が進みました。
教育・支援への示唆:目標を小さく、はっきり見せると、狙いが絞られて動きを計画しやすくなる可能性があります。的の周りに大きな枠を置くといった教材の工夫は、体育ですぐに試せます。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- DCD児は視知覚と運動計画に困難があり、そのために運動学習が進みにくくなります。そこで本研究は、練習中の的の見え方を操作することで運動学習が促されるかを調べました。
- 研究デザイン
- 学校ベースのランダム化比較試験(3群)
- 対象
- 公立学校9校のDCD男児75名(平均8.50±0.63歳、IQ>70)、各群25名
- 方法
- お手玉投げを、①的が実際より小さく見える錯視条件、②大きく見える錯視条件、③錯視なし、のいずれかで練習。最終練習の48時間後に保持テストで学習を評価しました。
- 限界・留意点
- 本研究が調べたのは、男児の、単一の投てき課題での学習です。女児や他の運動課題、長期的な定着に同じ効果があるかは分かっておらず、今後の課題です。
DCDRCT(小規模)OA
粗大運動エクササイズが協調運動に困難のある子どもの知覚と行為機能に及ぼす効果:ランダム化比較研究
原題:The effects of gross motor exercises on perception and praxis in children with motor coordination difficulties – randomized controlled study
Bagrowski B, Grobelny B, Dalziell A, ほか(計5名)|Frontiers in Neurology,17, 1891034|2026-09-07
DOI: 10.3389/fneur.2026.1891034|オープンアクセス(CC BY 4.0)
主な結果:両群とも順序づけ行為(Sequencing Praxis)と両側運動協調が有意に改善し、時点ごとの群間差はありませんでした。改善の時期は異なり、研究群は早い時点(t1)で、対照群はフォローアップ時(t2)で改善しました。特定の行為課題、下肢協調、課題遂行速度の追加的な改善は研究群のみでみられました。知覚面の変化はわずかでした。
教育・支援への示唆:両側統合の運動遊びは、行為と協調運動の支援として有望です。さらに、手足を交差させる動きを加えると、改善が早く現れる可能性があります。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- 体の正中線を越える運動は、前頭–頭頂ネットワークを働かせ、行為(プラクシス)や実行制御に関わる可能性があります。そこで本研究は、正中線交差の要素を含む運動が、含まない運動よりも知覚・行為機能を高めるかを調べました。
- 研究デザイン
- ランダム化比較試験(2群)
- 対象
- DCDの兆候がある6〜9歳児22名
- 方法
- 両群とも両側統合(Bilateral Integration)プログラムを実施し、研究群のみ正中線交差運動を追加。介入は9〜10週間(15〜16週のサイクル内)、3時点で知覚・行為・両側統合を評価しました。
- 限界・留意点
- 対象者は22名と小規模で、群間差も限られていました。
ASDSR/MAOA
自閉スペクトラム症の子ども・青年における運動能力の低さ:システマティックレビューとメタ分析によるエビデンス
原題:Impaired Motor Competence in Children and Adolescents With Autism Spectrum Disorder: Evidence From a Systematic Review and Meta-Analysis
Blanco-Martínez N, González-Devesa D, Varela S, ほか(計5名)|Autism Research,19(10), e70347|2026-08-17(オンライン)
DOI: 10.1002/aur.70347|オープンアクセス(CC BY-NC-ND 4.0)
主な結果:ASD群は、手先の器用さ、狙う・捕る、バランス、移動運動、物体操作のいずれでも定型発達群より成績が低く、運動困難や「要注意域」に分類されるオッズも高くなりました。運動の困難は特定の領域に限らず、幅広い領域にわたっていました。
教育・支援への示唆:ASDの子どもの支援では、社会性やコミュニケーションに加えて、運動を早い時期から評価し、運動面の支援を組み合わせます。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- ASDには運動の困難がしばしば伴います。しかし、定型発達児と比べたエビデンスは、研究や評価法ごとにばらばらに報告されてきました。本研究は、ASD児の運動能力が定型発達児より低いか、どの領域が最も影響を受けるかを検討しました。
- 研究デザイン
- システマティックレビュー・メタ分析
- 対象
- 42研究、参加者計3,142名(ASD児・青年と定型発達対照)
- 方法
- Scopus、Web of Science、PubMed、SPORTDiscusを2025年12月10日まで検索。標準化された検査(MABC、BOT、TGMDなど)で運動能力を評価した研究を対象にしました。
- 限界・留意点
- 研究間の異質性が大きく、著者らは方法論上の限界があると述べています。
ASDSR/MA購読誌
身体運動が自閉スペクトラム症児の運動スキルに及ぼす効果:ランダム化比較試験のシステマティックレビューとメタ分析
原題:Effects of Physical Exercise on Motor Skills in Children With Autism Spectrum Disorder: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials
Lei Z, Jia L, Tan Q, ほか(計9名)|Journal of Autism and Developmental Disorders,巻号未定(早期公開)|2026-06-24(オンライン)
DOI: 10.1007/s10803-026-07403-3|PMID: 42340634|購読誌(非オープンアクセス)
主な結果:運動介入により、運動スキル総合(SMD=1.58)、移動運動(1.34)、物体操作(1.37)、バランス(1.73)が有意に改善しました。メタ回帰では、実施頻度が高いほどバランスの改善が大きく、期間が長すぎると効果が頭打ちになる傾向がみられました。効果を左右していたのは、期間の長さよりも実施の頻度でした。
教育・支援への示唆:運動プログラムを計画するときは、期間を延ばすことより、実施の頻度を確保することを優先します。体育や放課後等デイサービスで活動を組み立てる際の手がかりになります。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- 身体運動は、ASD児の運動スキルにどの程度の効果をもつか。本研究は、RCTに限定してこれを検討しました。
- 研究デザイン
- RCTのシステマティックレビュー・メタ分析(PROSPERO: CRD42024600538)
- 対象
- RCT 10件、ASD児256名(12歳以下、平均6.91±2.51歳)
- 方法
- 6データベースを2025年10月30日まで検索。BOT-2、TGMD-2、PDMS-2、MABCなどの標準化検査を用いた研究を対象に、標準化平均差(SMD)で統合。バイアスはRoB 2.0、確実性はGRADEで評価しました。
- 限界・留意点
- 総合スキルとバランスで出版バイアスが検出されており、効果量は過大評価されている可能性があります。
ADHD観察研究(横断)購読誌
注意欠如・多動症の子ども・青年における脳波マイクロステートとスペクトルパワーの解析
原題:Analysis of electroencephalogram microstates and spectral power in children and adolescents with attention deficit hyperactivity disorder
Xu Y, Zeng Y, Yin W, ほか(計10名)|European Child & Adolescent Psychiatry,35(9), 2949–2962|2026-05-30(オンライン)
DOI: 10.1007/s00787-026-03050-2|PMID: 42217010|購読誌(非オープンアクセス)
主な結果:マイクロステートの特徴はADHDと対照群を識別しました。8特徴の線形判別分析モデルが最も良く、訓練データでAUC 0.967、検証データでAUC 0.747(感度0.695、特異度0.716)でした。さらに、脳波の特徴は症状の重症度も予測しました。
教育・支援への示唆:行動の背景にある脳の働きの違いを知ると、「やる気がない」「しつけの問題」と決めつけずに子どもを理解できます。なお、現時点では脳波だけで診断できる段階にはありません。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- ADHDの診断は行動の評価に頼っており、主観的になりやすいという課題があります。そこで本研究は、安静時脳波の特徴からADHDを客観的に識別できるかを検討しました。
- 研究デザイン
- 症例対照研究+機械学習による診断モデル開発
- 対象
- 服薬中・未服薬のADHD児・青年と定型発達対照(人数は原著参照)
- 方法
- 安静時脳波のマイクロステート(脳全体の活動パターンの短い切り替わり)と周波数帯ごとのパワーを特徴量とし、機械学習モデルを構築しました。
- 限界・留意点
- 検証データでは精度が大きく下がっていました。臨床で用いるには、別の集団での検証が必要です。
ADHD観察研究(縦断)OA
発達期の脳における注意欠如・多動症と入眠困難に共通するマルチモーダル神経画像メカニズム
原題:Common multimodal neuroimaging mechanism of attention deficit hyperactivity disorder and sleep initiation difficulty in the developing brain
Zu Y, Pang T, Luo L, ほか(計9名)|NeuroImage,328, 121795|2026年3月号(オンライン2026-02-07)
DOI: 10.1016/j.neuroimage.2026.121795|PMID: 41662982|オープンアクセス
主な結果:背側注意ネットワークとデフォルトモードネットワークの結合、右眼窩前頭皮質を含む皮質–線条体–視床回路、主要な白質線維が、ADHD症状と入眠困難の両方に関連し、ADHD症状と入眠困難の関係を媒介していました。ADHDの経過は3群に分かれ、症状が軽快していく群で入眠困難が最も重いという特徴がみられました。
教育・支援への示唆:ADHDのある子どもの支援では、日中の行動に加えて睡眠、特に寝つきの状態を確かめ、家庭と情報を共有します。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- ADHDのある人の20〜55%が睡眠の問題をもち、なかでも入眠困難は多動と強く関連します。本研究は、ADHDと入眠困難に共通する脳の仕組みを調べました。
- 研究デザイン
- 大規模コホートの縦断データ解析
- 対象
- 米国ABCD研究の子ども11,868名(男子52.1%)
- 方法
- 安静時fMRI・脳構造画像・白質画像のデータとADHD症状・入眠困難の関係を回帰分析で調べ、潜在クラス成長分析でADHDの経過群を分類し、交差遅延パネルモデルで縦断的な関係を検討しました。
- 限界・留意点
- 観察研究のため、因果関係は確定できません。また、睡眠は質問紙で評価されています。
LD・ディスレクシア準実験(被験者内比較)OA
軌道修正:家庭で行う多要素プログラムによる発達性ディスレクシアの改善
原題:Back on track: remediating developmental dyslexia with a home-based multi-component program
Harrar-Eskinazi KL, Denis-Noël A, De Cara B, ほか(計8名)|Annals of Dyslexia,巻号未定(早期公開)|2026-06-30(オンライン)
DOI: 10.1007/s11881-026-00378-x|PMID: 42377862|グリーンOA(著者稿などが公開)
主な結果:VA訓練は視覚的注意を、AP訓練は音素意識をより伸ばすという要素特異的な効果がありました。三段階全体では、読みの流暢性・書字・読解の伸びが通常指導のみの期間を上回りました。VA訓練から始めた方が読みの流暢性の伸びが大きくなりました。
教育・支援への示唆:1日15分程度の家庭学習でも、続けることで効果が期待できます。学校の指導と家庭学習を組み合わせる支援を考えるときの参考になります。日本語の読み書きの困難に同じ効果があるかは、今後検討する必要があります。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- 発達性ディスレクシアには、複数の認知的困難が関わります。本研究は次の三点を検討しました。特定の認知要素をデジタル訓練で鍛えられるか。保護者が関わることで訓練量が増えるか。多要素の介入は読みに累積的な効果をもつか。
- 研究デザイン
- 事前登録された複数単一事例(被験者内)介入研究
- 対象
- 8〜13歳の発達性ディスレクシア児144名
- 方法
- 視覚的注意(VA)、聴覚–音韻(AP)、感覚間統合の三つの要素のデジタル訓練を、各2か月・週5日・1回15分、保護者の見守りのもと家庭で実施(VAとAPの順序は入れ替え)。前後には週1回の通常指導期間(2か月)を設け、被験者内のベースラインとしました(NCT04028310)。
- 限界・留意点
- 無作為化された対照群をもたない被験者内デザインです。また、対象はフランス語話者でした。
LD・ディスレクシア準実験/比較介入研究購読誌
形態素重視と音韻重視の指導がディスレクシアのある児童に及ぼす異なる効果:潜在回帰分析によるエビデンス
原題:Differential Impacts of Morphology-Focused and Phonology-Focused Interventions on Students with Dyslexia: Evidence from Latent Regression Analysis
Wang-Kildegaard B, Irey R, Ji F, ほか(計5名)|Reading Psychology,47(5), 743–768|2026-01-29(オンライン)
DOI: 10.1080/02702711.2026.2614436|購読誌(非オープンアクセス)
主な結果:形態素群はデコーディング正確性と綴りで音韻群と同程度に伸び、語彙は有意に大きく伸びました。開始時の音韻意識が高い児童ほど、形態素指導の方が全領域で大きく伸びました。
教育・支援への示唆:指導の前に音韻の力を評価し、その結果に応じて指導法を選びます。日本語の指導でも、漢字の部首や語の構成に着目した指導を考える手がかりになります。
研究の詳細を見る(背景・対象・方法・限界)
- 研究の背景・目的
- ディスレクシアへの指導は音韻を中心とするのが一般的です。しかし、すべての子どもが音韻の困難をもつわけではなく、音韻指導で伸びるとも限りません。そこで本研究は、音韻重視の指導を形態素(語の成り立ち)重視の指導と比較しました。
- 研究デザイン
- 介入比較研究(多層差分の差分モデル)
- 対象
- ディスレクシアのある小学4年生(人数は原著参照)
- 方法
- 16週間、体系的な形態素パターン指導または音韻重視の指導を実施。開始時の音韻意識の水準を考慮し、デコーディング・語彙・綴りの事前事後の伸びを多層の差分の差分モデルで分析しました。
- 限界・留意点
- 対象は小学4年生のみでした。他の言語や学年に当てはまるかは分かりません。
※本ページの要約は、各論文の抄録をもとに当研究室が作成したものです。正確な内容は、原著でご確認ください。本ページは、医学的な診断や治療の助言を目的としたものではありません。お子さんの状態については、専門機関にご相談ください。